「論文を書くための科学の手順」について工学の観点から見てみる

2021-06-26

はじめに

先日,山田俊弘さんの「論文を書くための科学の手順」(>>Amazon)という本を読ませていただいたのですが,この本に書かれている内容が面白く,自分のためにログを残しておきたいということと,この本では科学について書かれていますが,工学の観点からこの本の内容を考えてみたいなと思ったためこの記事を書こうと思いました.

この記事について書いていることはすべて工学系の学部を専攻している個人の感想や意見,または本の引用であり,感想や意見については正しいとは限りません.参考にする際は出典である「論文を書くための科学の手順」を片手にお持ちになり,読むことをおススメします.

科学とは何か?

この本を読んだなかで一番重要だとおもったことのなかに,そもそも科学とは何かということであると思います.

「科学」は「知識」という意味を超え,その「知識を生み出すある特別な過程」のことも指されており,仮説演繹の論理展開でその知識を生み出す過程を進めていくことであるとされています.

※仮説演繹とは

  1. 研究対象とする現象を提案し,

  2. その現象を説明する仮説をつくり,

  3. 仮説を基に実証可能な予言を導き,

  4. 実験や観察で予言の正しさを評価し,

  5. この評価をもとに仮説の真偽を検証する

また,科学にはもう一つの意味があり,知識を生み出す過程の中で生まれた「体系的知識(有機的なつながりをもった知識の集合)」であるともされています.

僕は科学について,単にこれまでに蓄積された知識を用いて新たな概念を生み出すということとしか認識していなかったため,知識を生み出す過程とそのなかで生まれた体系的知識も科学として認識されるということは初めて知ることができました.

工学との違いとは

科学とはなにかについて分かったところで,僕たちが専攻している工学とは何かということと,科学と工学にはどんな違いがあるのかということについて考えてみようと思います.

そもそも工学とは,数学と自然科学を基礎とし,ときには人文社会科学の知見を用いて,公共の安全,健康,福祉のために有用な事物や快適な環境を構築することを目的とする学問であるとされています.>>工学における教育プログラムに関する検討委員会(1998 年)

ここから考えられる科学と工学の違いにどんなことがあるか考えてみます.

工学は自然科学の分野を基盤に学問を進めていくということであり,自然科学にはここで書いている科学という学問の一部であることから,工学は科学の発展形であり,そこに他の数学や人文社会科学などの分野の学問が付随し,世の中を改善するものを創造することが科学との違いであると個人的には考えています.

また,科学と工学が明確に違うというイメージはなく,工学を進めていくうえで必要な知識などについて科学で用いられる知識を活用するというイメージをもちました.よってこの記事のタイトルに書いている「工学の観点から」ということは,科学の観点から科学を見てみるということになり,日本語としておかしいことがわかりますが,このままのタイトルで書いていこうと思います.

科学・工学における研究の進め方

科学は一般的に仮説演繹とそれを用いた探究的な研究スタイルを主にとられており,その探究的な研究活動の中でおこなう観察や実験は真理を見つけ出す手段として利用されているとされています.この観察と実験はあくまで手段であり,目的ではないとされています.そして,科学には「真理の発見のための探究的なスタイル」と「発見された真理をまとめるための記述的なスタイル」があります.

そして,工学もこの考え方と同じように,工学における研究もその分野での真理の発見を行い,再現可能なモデルを構築し,未知の発見を目指すということが各大学の研究の進め方のページには沢山記載されているので,科学と工学における研究の進め方にそれほど差異がなく感じられます.

最後に

ここまでこの記事を書いてみて,科学と工学における違いと,工学自体がどんな学問なのかということについての知識が深まってきたと感じています.

本を読みながら「工学ではこの部分はどんな意味をもつのだろうか?」といったことや,「科学と工学に明確な知識があるのではないか」ということを色々と考えていたので,正直にいうと少し残念な結果になったかなと思います.

本の内容は工学だけでなく,これからの人生のなかで大切な考えかたなどが沢山盛り込まれており,読み応えのあるものでしたし,考え方に詰まった際には何回も読みたいと思う本でした.

この本とこの記事を書く際に参考にした様々な文献の知見をもとにこれからの自身の工学における研究を進めていきたいと考えています.

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